「動画削除で苦痛を受けた」通報者を提訴

2020年8月19日

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 共同通信で気になる記事が配信されている。

2020年8月19日配信『「動画削除され苦痛」と提訴 ユーチューバー同士争う訴訟開始』 。

記事はこういうことらしい。

「動画削除され苦痛」と提訴 ユーチューバー同士争う訴訟開始

 動画投稿サイト「ユーチューブ」に公開した動画が著作権を侵害しているとの指摘を受け削除され、精神的苦痛を受けたとして、富山県の女性ユーチューバー(42)が、京都市の40代女性ユーチューバーら2人に慰謝料など計110万円の損害賠償を求めて京都地裁に提訴したことが19日、分かった。

 同日、地裁で第1回口頭弁論が開かれ、被告側は請求棄却を求めた。原告側代理人によると、著作権侵害を巡るユーチューバー同士の訴訟は全国的に珍しいという。

 原告側は「ユーチューブは著作権侵害通知があれば機械的に削除している」と指摘。被告側は「原告は異議申し立てができた」と反論している。

報道を読む限り、原告が作成した動画について、被告がYouTube運営に「著作権侵害」として通報した結果、原告作成の動画が消された。原告はそれを苦痛に感じたという内容の様子。

この件の個別の問題については報道の限りでしかわからないし、特に何も言うことはない。

一般的な話としての考察

ここからは、この事件での原告や被告の個別の話ではなく、一般論としての考察。

インターネット上では、「書き込みで名誉毀損を受けた」とする者が削除要求を行ったり、そういう方法を指南するようなサイトもみられる。

しかしそれが、必ずしも正当な削除要求だとは限らない。

こいつ気に入らないから消させてやれと安易な気持ちで、正当な言論に対して「自分への名誉毀損」と言いがかりを付けて削除要求を出す輩もいる。

例えば、公益に関するニュース記事について、自分への名誉毀損・プライバシー侵害と自分勝手なことを主張して、ニュースを引用して紹介し差し障りのない感想を書いただけだけの個人ブログに対して、あたり構わず消させようとする犯罪者。

性犯罪、教師が生徒に対しておこなったいじめや暴力行為、企業の不正疑惑などを取り上げたニュースなどに触れたことで、犯人やその関係者と思われる者からの不当な削除要求・送信防止措置で恫喝される被害を受けたと訴えている個人ブログも多数見受けられる。

気に入らないブログを消せ、また気に入らない検索結果を表示させないようにしろと、犯罪者がスラップ訴訟を起こしたケースも報道されている。

元ネタとなった新聞記事は否定できずに全くスルーして、単に引用して内容を紹介したり感想を書いただけの個人ブログに敵意を向けて攻撃する。

安易な通報に対して運営側も安易に対応する傾向もある。

法的には、一部については「公益」と認めて不法要求者側の要求を認めなかったケースもある。しかし、逆に不当な要求を認めた判決もあり、ブログ作成者の権利が十分に保障されているとはいいがたい状態になっている。

自称「被害者」の主張がいわれのない言いがかりだった場合もある。

現行のプロバイダ責任制限法では言いがかりを付けた者勝ちで、落ち度や不法行為もないのにコンテンツを消されたり不法に脅されて精神的苦痛を受けた作成者への名誉回復・被害救済の手法は事実上なかった。

法的に不当な通報者を訴えられるかも不明だし、訴えたくても経済的に大きな覚悟が必要で、普通は踏み切れず泣き寝入りになってしまう。そういう行為への被害救済の態勢を作ってほしいと強く感じている。

ユーチューバーの訴訟についての個別の事実関係については報道の範囲以上のことはわからないが、少なくとも原告は、「自分の動画に対していわれのない言いがかりを付けられて不当削除されたと主張していると読み取れる。

著作権侵害と名誉毀損と具体的な内容の違いはあるが、作成者側にとってはいわれのない言いがかりを付けられて自作のブログやコンテンツを削除されそうになったとか、不法な法的手段をちらつかせて恫喝を受けたとか、それらの行為によって精神的苦痛を受けたとか、そういう事件も多数起こっていることは事実である。 

その意味では、コンテンツ作成者が不当な言いがかりを付けられたときの救済につながる可能性があるという観点から、訴訟の行方に注目したい。

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